共に苦しみ、共に喜ぶために

「共に苦しみ、共に喜ぶために」 協力伝道を覚える礼拝 宣教 2023年1月29日

 コリントの信徒への手紙Ⅰ 12章12〜26節     牧師 河野信一郎

おはようございます。早いもので、1月も最後の主日を迎えました。今週の水曜日から2月に入ります。驚きです。先週は、十数年ぶりに強烈な寒波が日本全土を襲い、各地の大変さがニュースを通して伝わってきました。そのような中、今朝も神様の招きを受けて御前に礼拝者とされ、皆さんとご一緒に賛美と礼拝をおささげできる幸いを神様に感謝いたします。

 まず感謝のご報告です。先週のメッセージの中で、イエス様を救い主と信じる信仰をT教会で表され、バプテスマの準備を始められた女性のことをお話ししましたが、神様は本当に素晴らしいです、その日の晩に彼女からメールが来て、3月26日の日曜日にバプテスマを受けられることが決まり、これからの二ヶ月間、その準備の学びの時をされるという報告がありました。とても嬉しく、感謝なメールでした。彼女の祝福を引き続きお祈りください。

さて、今朝の礼拝は、「協力伝道を覚える礼拝」としてささげています。今日から来週5日の日曜日までの8日間、日本バプテスト連盟に連なる全国316の諸教会の歩みを覚えて祈り、また連盟の働きを覚えて祈る「協力伝道週間」を過ごしてまいります。教会のメンバーでない方々にはあまり関係のないように感じるかもしれませんが、大久保教会の礼拝に出席されている限り、皆さんにもとても関係のあることですので、自分には関係ないという認識は、どうぞ今捨てていただき、日本の諸教会の実情を知っていただきたいと思います。

わたしは、2017年4月から、東京、神奈川、西関東という3つの地方連合にある76の教会と10の伝道所に伴走してゆく「東日本地区宣教主事」の一人として6年間働かせていただきました。働くと言っても、ボランティアと同じで、給与が出るわけではありません。しかし、大切な働きです。3つの連合ですが、それぞれ東京、千葉、神奈川、山梨、長野、静岡に所在していて、わたしともう一人が担当しています。コロナパンデミックの前には、そのうちの15教会を実際に訪問しました。この教会訪問を「問安」と言います。連盟の宣教部に様々な内容の支援の要請が届きますと、部長の代わりに現地に赴いて、教会の様子を見たり、牧師や教会員の方々とお話しして色々な課題を聞いて、宣教部に様子を報告します。

今朝のメッセージは、これまで訪問した教会をいくつか紹介し、諸教会がどのような状況に今あるのか、またこれまでどのような支援の協力を連盟がしてきたのか、また連盟を通して大久保教会がこれまでにどのような支援をしてきたのかをお伝えし、今後は何ができるのかについて分かち合い、この1週間、諸教会を覚えてお祈りいただきたいと願っています。

わたしたち大久保教会は、東日本大震災以降、岩手県のMバプテスト教会、宮城県のTキリスト教会、そして福島県のKキリスト教会を覚えて祈り、年に一度、支援献金を送っておりますが、それも協力伝道の大切な一端です。そして今月から3ヶ月連続でわたしをN教会へ派遣していることも、大久保教会の大切な協力伝道の一つです。

さて、まず今朝の聖書箇所であるコリントの信徒への手紙Ⅰ 12章12節から26節に記されていることを触れておきたいと思います。この第一コリント12章の部分は31節まで続いていますが、教会はキリストのからだであり、その教会は多くの部分から成り立っていることが記されています。わたしたち教会員が、キリストのからだなる教会を立ち上げるために、手と手を握りしめ、それぞれが自分の責任を負い、共に責任を果たさなければ、教会は立ち行かないで、健康な教会が建て上げられていかないということを使徒パウロは書き送り、コリント教会全体を、そしてわたしたちをも大いに励ましてくれています。

まず12節から14節を読みます。「12体は一つでも、多くの部分から成り、体のすべての部分の数は多くても、体は一つであるように、キリストの場合も同様である。13つまり、一つの霊によって、わたしたちは、ユダヤ人であろうとギリシア人であろうと、奴隷であろうと自由な身分の者であろうと、皆一つの体となるためにバプテスマを受け、皆一つの霊をのませてもらったのです。14体は、一つの部分ではなく、多くの部分から成っています」とパウロは書き送っています。これは、「キリストの教会の場合も同じように、一つの教会となるために、各自がバプテスマをうけ、一つの霊・聖霊を神様からいただいた」というのです。

ここで18節に一気に飛びますが、そこには「神は、御自分の望みのままに、体に一つ一つの部分を置かれたのです」とあります。創造主なる神様が、ご自分の望みのままに、御心のままに、教会にそれぞれの部分を適材適所に置かれたという告白がされています。教会がキリストのからだとして成るために、神様のご計画とご配慮が必ずあり、御手が添えられているということで、わたしたちの勝手な思い込みや願いで教会形成をしてはならないということになると思います。ですから、神様から与えられた働きを受け取り、忠実に成してゆくことが重要であるということです。

今朝は、この教えを「教会」というコンテキストではなく、「日本バプテスト連盟」というコンテキストに置き換えて考えてゆきたいと思うのです。つまり、連盟は一つでも、全国の316の教会から成っていて、神様がお決めになって、それぞれの教会を各都道府県で必要な場所に置かれたということを知ることが協力伝道を覚える中で重要なことと考えます。

ですから、21節に「目が手に向かって「お前は要らない」とは言えず、また、頭が足に向かって「お前たちは要らない」とも言えません」とありますが、一つの教会が他の教会に対して「お前は要らない」とは言えませんし、ある程度の力のある教会が小さく弱い教会に対して、「お前は役に立たない」と決して言ってはならないのです。一つ一つの部分が大切な役割を持っているように、一つ一つの教会にも神様から大切な使命が与えられています。

22節に素敵なことが記されています。「それどころか、体の中でほかよりも弱く見える部分が、かえって必要なのです」と。日本バプテスト連盟の中で、他よりも弱く、小さく見えるような教会・伝道所が、かえって必要なのであるということです。教会が建てられている都道府県、地域、町、土地に生きる人々につながるために、神様の愛とイエス様の福音を必要としている人々が暮らす場所にキリストの福音を宣べ伝えるために、神様がイエス様を救い主と信じる人々を集めて信仰の群れとし、キリストのからだなる教会を建てられるのです。

さて前のスクリーンをご覧ください。プライバシー保護のため、礼拝堂内とライブ配信の映像に違いがありますので、ご了承ください。さて、最初におまけから行きます。先週、北海道から東北、北陸で大雪が降り積もりましたが、これはS教会の男性たちがO教会の除雪作業のために昨日行かれた時の写真です。除雪車が入って来ることができない所を2時間かけて除雪してくれたそうで、これがS教会のI牧師で、彼も地区宣教主事です。

O教会は女性と高齢者の会員が多く、除雪が困難だそうです。ですから、SからはるばるOまで車で出かけて行って、次の日の礼拝のために除雪して、昼食と交わりをして帰る。交通費は北海道地方連合から支給されるそうですが、このような援助は普通できないと思います。北海道には他にも無牧師の教会があって、ご高齢の教会員では除雪ができず、教会周辺にも迷惑をかけてしまうことがあるそうで、除雪するだけでも費用がかかるのです。そこへ除雪の応援に行く人たちがいる。これも素晴らしい「協力伝道」です。

さて、皆さんは「百万円会堂」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。1950年代後半から1960年代までの期間、総工費100万円の会堂が日本各地に建てられました。経費削減のため、みんな同じ図面で建築されています。わたしは、長野県松本市にありますM教会を3年連続で訪問しました。この教会も築60年に迫る「百万円会堂」で、不具合がたくさんある建物でしたが、会堂建築のビジョンが与えられ、2019年の年末に新しい会堂が立ちましたが、予算オーバーで機材を購入できませんでしたので一部を連盟が支援しました。

このような「百万円会堂」を持つ教会はまだ少しあるのですが、もっと古い会堂で礼拝をささげている教会があるのです。それがSキリスト教会です。この写真はわたしが訪問した2018年11月のものですが、この会堂は1953年に建築されています。すなわち今年で築70年です。高齢者の方々が前を向いて賛美ができるように、説教中も前を向けるように、プロジェクターの購入金額の一部を支援してほしいという要望が出されたからです。そうしますと、音響の機材やスピーカーもとても古い物を使用している事を知りました。S県は大きな地震が来ると言われていますが、地震に耐えられない古い会堂をどうすれば良いのでしょうか。新しい会堂を建築するだけの財政力は高齢者の多い教会にはありません。

島根県にある教会は、会堂の老朽化とシロアリの被害で建物を解体しなければならず、解体後の土地は今でも更地のままになっています。神奈川県にある教会の会堂も築72年です。会堂だけでなく、牧師館も、教育館も老朽化が進んでいて、苦肉の策で土地の半分を売って、新会堂と牧師館を建てようとしましたが、土地を売却するための連盟の規約がそれを承認できない形になっていて、規約改定には最低でも2年必要となっています。

さて、日本バプテスト連盟は、その昔、47の都道府県すべてにバプテスト教会を建て、全日本に福音を伝える伝道をする施策を立てました。しかし、12の県には1つのバプテスト教会にとどまってしまう形になりました。岩手、秋田、山形、栃木、石川、富山、福井、三重、鳥取、島根、徳島、高知です。和歌山も1995年までの37年間、教会が一つだけでした。また、新潟には2つの教会と伝道所が一つありましたが、2009年に合同し、一つの教会になりましたので、現在では、13の県に一つのバプテスト教会となっています。

今朝は、その中のFキリスト教会を紹介したいと思います。ご存知のように、Fは北陸地方にあり、富山県と石川県と同じく、仏教の影響が根強く、宣教が大変難しい土地柄とされています。そのような土地に、1958年、連盟の直属開拓地として宣教が始まり、1960年には「百万円会堂」と牧師が住む家が建てられました。しかし、会員数10数名の教会では、すぐに牧師給も払えなくなりました。30年ほど前からは会員数は一桁となり、連盟からもだんだんと孤立して行きました。20年ほど前の連盟総会で、諸教会に対して、F教会から助けてほしいとSOSが出されましたが、連盟として動くことはありませんでした。

そして6年前に、健康上の理由により牧師がお辞めになり、教会員は年齢が80代の3名となりました。そして5年前にお一人が天に召され、お一人がご家族のもとへ引き取られてゆき、男性会員一人だけが教会に残されました。教会を閉じるしかないと誰もが考えました。しかし、他県にある教会の牧師をされていたT牧師夫妻が、このままではダメだと感じ、教会を辞され、F県へ移住され、教会の再建を始めました。礼拝者は3名になりましたが、会堂は築61年、シロアリの被害に遭い、会堂を解体しなければならなくなりました。そこで牧師館を増築して礼拝が始まりました。すぐにコロナパンデミックが始まりましたが、転勤となって来られた家族などの転入があり、礼拝者も少しずつ増えてゆき、子どもたちも増えました。この教会は、新しい会堂建築のビジョンが与えられ、全国のバプテスト教会から祈りと支援を求めています。わたしたちに何ができるでしょうか。

連盟は、長い間、F教会の悲痛な叫びに配慮せず、多方面で良い事をしているように振る舞っていました。23節の言葉通りです。「わたしたちは、体の中でほかよりも恰好が悪いと思われる部分を覆って、もっと恰好よくしようとし、見苦しい部分をもっと見栄えよくしようとします。」 しかし、24節の後半に、「神は、見劣りのする部分をいっそう引き立たせて、体を組み立てられました」とあります。真実な神様は、小さくされている教会とその人々を決して見過ごされないで、目をとめられ、その弱さの中で働いてくださるのです。

日本バプテスト連盟の力も年々弱くなってきており、今年の4月から機構改革が始まります。しかし、そのような中で分裂が起こらないようにしなければなりません。どうしたら良いでしょうか。25節に「体に分裂が起こらず、各部分が互いに配慮し合っています」とあります。諸教会がお互いに配慮し合う時に、協力し合う時に、一つのままでいることができます。神様がそうしてくださるのです。それは人間関係も、家庭も、教会も、すべて同じです。26節、「一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しみ、一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです。」 わたしたちにはできないことも神様にはできると信じて、共に生きるのです。主の助けと導きと励ましをまず祈りましょう。