本物と偽物の見分け方

「本物と偽物の見分け方」 九月第四主日礼拝 宣教要旨 2016年9月25日

ヨハネの手紙一 4章1〜6節       牧師 河野信一郎

街には、多くの質屋やブランド買い取り専門店がありますが、そこに持ち込まれる「ブランド」品の30%は偽物だそうで、本物だと信じて大切に使用・保管し、高く買い取ってもらえるだろうと期待して来た客は「偽物で買い取れません」という店員さんの言葉に愕然となり、ショックを隠せないそうです。我が家は、山梨名物・桔梗屋の信玄餅が好きなのですが、わたしが出張の際にまがい物を買ってきましたら、最初は喜びましたが、二つ目には誰も手を出しません。美味しくないというのです。致し方がないので、わたしは空しい気持ちで残りをすべて食べました。やはり、オリジナル品、本物が一番で、模造品はダメなのでしょう。

さて、ヨハネが愛していた諸教会にクリスチャンを惑わす偽預言者・偽教師が入り込んできました。最近、日本のキリスト教界に中国から「全能神教会」という異端グループが、また韓国から「救援派(クオンパ)教会・グッドニュース宣教会」という異端グループが入り込んできて、注意が必要とされています。これらの異端グループは、教会に入り込んできて、特に若者たちに近づき、引き込もうとしています。「全能神教会」が異端である理由は、彼らは「イエス・キリストはすでに再臨された」と告白しているからです。また、クオンパは「あなたは本当に救われているのか」と強く迫り、自分の救いを疑わせ、恐怖心を煽ります。

使徒ヨハネたちが宣教していた時代には「聖書」という書物はまだなく、使徒や教師たちからイエス・キリストの言葉・福音が伝えられ、人々はそれを聴き、人から人へと伝えていました。キリストの福音は、目からではなく、耳から人々の心に入って行った訳です。そういう状況の中で、間違った教えをクリスチャンたちに伝えて、彼らを惑わす者たちが現れ、教会は偽預言者たちを信じる者たちと「その教えはおかしい。間違っている」と不信に思う者たちが混在するようになり、不信が生じ、互いに愛し合うことが出来なくなり、分裂し始めていったのです。そのような諸教会の状態を伝え聞いたヨハネはこの手紙を書き送ります。

ヨハネは、戸惑いの中で苦しみもがく兄弟姉妹たちに、「愛する者たち、どの霊も信じるのではなく、神から出た霊かどうか確かめなさい。偽預言者が世に大勢出て来ているから」と励まします。「確かめなさい」というのは、教師・預言者と呼ばれている人たちの言動をよく吟味し、正しい者かそうでないかを判別しなさいという意味です。現代に生かされている私たちは聖書を手にし、この聖書が判断の基準になるのですが、当時のクリスチャンたちには聖書はありませんでしたから、ヨハネは次の2つことを基準に判断しなさいと命じます。

一つ目の基準は、「イエス・キリストが肉となって来られたということを公に言い表す霊はすべて神から出たものです」と言います。偽預言者たちは「神の子、キリスト、メシアが罪に汚れた肉体をとって地上に来られるはずはない」と言って、イエス・キリストが人として地上に誕生されたことを否定していましたので、それをチェックの基準とせよと命じたのです。しかし、ヨハネと同じ信仰を持つ使徒パウロは、フィリピの信徒への手紙2章6〜8節で「キリストは、神の身分でありながら、神と等しい者であることに固執しようとは思わず、かえって自分を無にして、僕の身分になり、人間と同じ者になられました。人間の姿で現れ、へりくだって死に至るまで、それも十字架の死に至るまで従順でした」と告白しています。

現代に生かされている私たちは、人々の様々な考えや意見に惑わされることがないように、主イエスから離れないために、いつも聖書の御言葉、主イエスの言葉に聞き従って行くこと、聖書を基準にこの世の言葉と出来事を良く見極めてゆく必要があります。ですから、まず私たちの手元に聖書が与えられている恵みを神に感謝し、信仰の糧として日々読んでゆきましょう。聖書を通して、私たちはイエス・キリストが神の子であり、救い主であり、今も生きて共にいてくださるインマヌエルであることを信じ、喜び、平安と希望に満たされます。

主イエスを信じる者の内に神の霊・聖霊が宿ります。この聖霊が助け、励まし、力を注いでくれるので、私たちは「イエスは主なり、キリスト、救い主」と告白できるのです。「イエスのことを公に言い表せない霊はすべて、神から出ていません」と3節にあります。私たちに大切なこと、教会の使命は「イエス・キリストは救い主です」と公に告白することです。

そのことを為す時、私たちは何も恐れる必要はありません。人を恐れる必要もありません。何故ならば、4節にあるように私たちは「神に属しており、この神は世にいる者よりも強く、すでに勝利されている」からです。主イエスは、「あなたがたには世で苦難がある。しかし勇気を出しなさい。わたしはすでに世に買っている」とおっしゃられたとヨハネの福音書16章33節に明記されています。この主イエスを信じ、すべてを委ねて従えば良いのです。

さて、本物と偽物を見分ける2つ目の基準が5節にあります。「偽預言者たちは世に属しており、そのため、世のことを話し、世は彼らに耳を傾けます」とあります。偽預言者たちは、人間の観点から話し、目に見えるものだけ、過去と現在の事柄のみか、耳に心地よいことだけを話すか、過去の間違いを指摘して不安を煽ったりするだけで、神の愛と赦し、永遠の命の約束、希望を語らないということです。イエス・キリストを救い主と信じる者たちは、罪の赦しと永遠の命・祝福の約束に生かされていますから、心に平安と希望があります。

私たちを罪から救い、永遠の命を与えるために、神は救い主としてイエス・キリストをこの世に遣わしくださり、救いの道を開いて示してくださいました。救い主イエスは、真理であり、永遠の命への道であります。すべての人にこの道を知って欲しい、歩んで欲しい、神のもとへ立ち返って欲しいと神は今日も心から願い、招いておられます。

まだイエス・キリストを救い主と信じてつながっていない方々は、どうぞ信じて救いを受け取ってください。まだ神に属していない方々は、どうぞ主イエスにつながって、そして父なる神に属してください。神の子となり、神の家族の一員になって歩んでください。

すでに主イエスにつながっている人は、今後も主イエスの言葉に聞き従い、しっかりとつながり続けてゆきましょう。主イエスを通して、神に属し、神から愛され、永遠の命が約束され、その道を主イエスが伴ってくださっている恵みを喜び感謝してまいりましょう。

偽りの中に生きるのではなく、真理の内に生かされてゆきましょう。それが神の御心、主イエスの願い、ご聖霊の導きです。救い主イエスを告白し、証し・紹介して、一人でも多くの方々を主につなげてゆきましょう。そのために、まず祈ることから始めましょう。